本部町浜元の100年フード「マカトおばぁのラフテー」の物語
沖縄本島北部、やんばると呼ばれる地域にある本部町(もとぶちょう)。美しい海と山に囲まれたこの町に、浜元(はまもと)という海沿いの集落があります。
目の前には東シナ海が広がり、一日の終わりに、辺りを真っ赤に染める夕日は言葉を失うほどの美しさ。
そんな風光明媚な本部町浜元の “山の上にある家” という意味の「サンパナ」の名で親しまれていた小濱家に、マカトさんは嫁ぎました。
当時、地域の中で何かと頼られる存在だった小濱家に嫁いだということもあり、家族のために家事全般を誠心誠意行うのはもちろん、地域の行事や風習も熱心に学び、いつしか「何か困ったことがあったらマカトおばぁに聞きに行こう」と言われる存在になりました。
そんなマカトおばぁは地域の年中行事がある時はもちろん中心的存在。祭事が不備なく滞りなく進むよう、テキパキと指示を出します。
厳しくもあったけれど、常に愛情深く、地域の子どもたちはみな大きくなると「マカトおばぁに育てられた」と口を揃えて言うほど、すべての子を我が子のように愛情をかけ手をかけ、面倒を見ていました。
沖縄の代表的な祭事料理の一つであるラフテーの作り方を、マカトおばぁから直接習ったのが、孫である小濱克也さん。
ラフテーは琉球王国時代は宮廷料理として食べられていましたが、明治時代の廃藩置県以降、徐々に庶民にも広まっていった料理です。ご先祖様にお供えする重箱料理であり、豚肉が欠かせない沖縄料理の中でメインとも言える存在です。
豚肉をたっぷりのお湯でしっかりと茹で、その後に本部町の名産でもあるかつおの出汁と、豚の茹で汁でさらに茹で、にんにくとしょうが、黒糖と醤油、そして泡盛で味付け。
仕込みから優に半日以上はかかるというラフテーは、じっくりと時間をかけて煮込むことで、肉質がとろけるようにやわらかになり、こっくりとした味わいに仕上がります。
すべては口伝えで習った、マカトおばぁのラフテー。ラフテーを作るときには克也さんの横に立ち、細かく指示をしていたマカトおばぁの一言、一言を忘れないよう、克也さんは自分でレシピを書き起こし、その味が今へと伝えられています。
沖縄を代表する豚肉料理、ラフテー。100 年先まで続く味を、ここ本部町から。